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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)1126号 判決

原告 井上一郎

被告 国・大阪市・大阪府 外六名

主文

原告の被告らに対する本訴請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める判決

一、(原告)

1、大阪地方裁判所昭和二三年(行)第六五号の四事件(大阪高等裁判所昭和四一年(行コ)第六七号事件)において別紙物件目録記載土地に関し、訴外大阪市東住吉区農地委員会樹立の買収計画を取消す旨の判決が確定したとき、原告に対し別表関係被告欄記載各被告(以下関係被告という)は同表関係土地欄記載土地(以下関係土地という)につき、同表関係登記欄記載各登記(以下関係登記という)の抹消登記手続をせよ。

2、訴訟費用は被告らの負担とする。

二、(被告ら)

主文同旨

第二、当事者の陳述

一、請求原因

(一)、別紙物件目録記載土地(以下全部を本件土地といい、個別的には同旨目録記載番号により例えば第一の(一)土地などという)のうち第一の(一)及び(二)土地はもと一筆の土地(一一九二番地)であつたところ昭和三八年一一月二六日右各二筆の土地に分筆されたものである。

(二)、本件土地はもと原告の所有であつた。

(三)、本件土地について、訴外大阪市東住吉区農地委員会は、昭和二二年一二月三〇日自作農創設特別措置法(以下自創法という)三条一項二号に基き同二三年三月二日を買収期日とする買収計画(以下本件計画という)を樹立した。

(四)、その後訴外大阪府知事は右計画に基き本件土地につき昭和二三年三月二日買収処分を了した。

(五)、原告は本件計画に対し、当裁判所に適法にその取消訴訟を提起した(昭和二三年(行)第六五号の四事件)ところ、右計画取消の原告勝訴の判決がなされたが、右取消事件は目下大阪高等裁判所に控訴審として係属中(昭和四一年(行コ)第六七号事件)である。

(六)、ところで本件土地について別表記載のとおり関係土地につき、関係被告及び被告奥村チヨ同八重子両名の被相続人亡奥村一郎を権利者とする関係各登記が経由されている。

(七)、前記亡奥村一郎は昭和三九年一月一七日死亡し、被告奥村チヨ、同八重子が右一郎の権利義務を相続により包括承継した。

(八)、前(五)項記載の本件計画取消判決が確定すればこの計画に基きなされた前記買収処分は遡及的に無効に帰し、原告は右買収処分により一旦失つた本件土地所有権を遡及的に回復し、関係被告らは関係土地につき所有権を回復した原告に対し関係登載の抹消登記手続をなす義務を負担するに至る。

(九)、ところで本訴は前記取消判決確定前ではあるが次のように前項記載抹消登記請求を予めなす必要がある。

すなわち、

(1)、本訴は行政事件訴訟法((以下単に行訴法という)一三条一項一号に該当する関連請求にあたる。

(2)、右取消判決確定までには相当の日時を要しその間に本件土地所有権が或いは、そのまま、或いは分筆された上転々譲渡または他物権が設定される虞あり、かくしては右判決確定時における原告所有権の原状回復の機会を逸し若しくは右回復の執行が困難になるのみならず、権利関係が徒らに複雑化し原告の将来の権利保護に全きを期することが困難である。

(3)、また然らずとするも、右判決確定までに稍もすると転得者たる被告らより取得時効の援用を受ける虞もあるので予め右時効中断の必要性がある。

二、被告らの答弁

(被告国)

請求原因(二)、(三)(但し本件計画樹立の日は昭和二二年一二月二八日である)、(四)、(五)の全部、同(六)のうち関係部分はいずれも認め、同(八)は争う。

(被告大阪市)

請求原因(一)及び(三)乃至(五)の全部(但し本件計画樹立日は被告国主張と同一同(六)うち第一の(2)土地に関する部分を認め、同(二)(七)は不知、同(八)は争う。

(被告大阪府)

請求原因(三)のうち第二土地につき本件計画が樹立されたこと、同(四)(五)全部、同(六)のうち第二土地に関する部分を認め、同(八)は争い、その余の請求原因事実はすべて不知。

(その余の被告ら)

請求原因(一)全部、同(三)のうち本件計画樹立があつたこと、同(四)全部、同(六)のうち被告ら及び亡奥村一郎関係部分、同(七)全部を認め、同(八)は否認し、その余の請求原因事実はいずれも不知。

三、被告らの抗弁

(被告助田、同奥村両名、同辻江、同大阪府、同大阪市)

(一)、被告山野は第一土地につき、被告辻江は第二土地につき、夫々大阪府知事より自創法一六条による売渡処分を受け、いずれも右売渡通知書の交付を受けた昭和二三年一〇月一八日から各自主占有を始め、第一土地につき被告山野は爾来右占有を継続し昭和二九年一月一一日その占有を被告中井に譲渡し、同被告は爾来右占有を継続し同三二年四月一二日被告助田に右占有を譲渡し、同被告は爾来その占有を継続し、被告辻江は第二土地を前記占有開始以来、これを継続し来たり、夫々昭和三三年一〇月一八日に至つている。

(二)、被告山野、同辻江はいずれも前項各占有の始め自己が所有権を取得したものと信ずるにつき無過失であつた。

よつて右両名の占有開始の後一〇年間を経過した昭和三三年一〇月一八日を以つて、第一土地について被告助田の、第二土地について被告辻江の各取得時効が完成した。

(三)、被告奥村両名の被相続人奥村一郎は第一土地について右時効完成後別表関係登記(6)(5)の登記原因により適法にその所有権を取得したものであり、被告奥村両名はその内第一の(一)の土地を昭和三九年一月一一日の相続によりこれを取得したものである。被告大阪市は第一の(二)土地を昭和三九年一月二四日右奥村両名より別表登記原因記載どおり適法にその所有権を取得し、また被告大阪府も第二土地について被告辻江の右時効取得後昭和三七年三月一九日付売買によりその所有権を取得したものである。よつて被告奥村両名、同助田は各第一土地につき、同大阪市は第一の(一)土地につき、同辻江、同大阪府は各第二土地につき、夫々右取得時効を援用する。

(四)、以上のとおり、原告は前記(二)の一〇年の時効完成により既に本件土地についての所有権を失つているので、原告主張の別訴の本件計画取消判決の確定によつても、所有権回復の余地なく被告助田、同奥村両名、同辻江、同大阪府、同大阪市に対する関係登記の抹消請求権が発生する余地がない。

(被告国、同山野、同中井)

被告国、同山野、同中井を除くその余の被告によつて各関係土地につき取得時効が援用されその時効の要件が完備していることは前項右被告らの主張どおりであるので、原告はもはや主張取消判決の確定によつても所有権回復の余地はない。よつて被告国、同山野、同中井に対する本訴請求もいずれも理由がない。

四、前項抗弁に対する原告の答弁

被告らの抗弁のうち無過失の点は否認する。すなわち後記再抗弁(二)記載のとおり本件買収処分及び売渡処分には種々の瑕疵が存し、就中被告山野、同辻江は関係土地につき不法占有者であつたのであるから、同人らが仮に右瑕疵の存在を知らず、本件売渡処分により所有権を取得したものと信じたとしてもそう信ずるにつき重大な過失があつたというべきである。

また、その後の転得者であるその余の被告についても、およそ重要な不動産を取得しようとするときは、本件組合地区内の土地においては多数の買収計画取消訴訟が提起されて係属中であつたのであるから、少くとも農地委員会または売渡を受けた前記被告両名につき訴訟係属中なるか否かにつき調査すべきが当然であるのに、唯漫然転売を受けたのは重大な過失があるというべきである。

五、原告の再抗弁

(一)、取得時効は中断中である。すなわち行政事件訴訟法の立法趣旨に照らすと、被買収者である原告において適法に買収処分又は計画取消訴訟を提起することは本件被告らの取得時効を中断する効力があると解される。

けだし、旧行政事件訴訟特例法(以下単に行特法という)下では被買収者は知事または買受人を被告として売渡処分無効確認または直接所有権転登記抹消請求の訴えを提起するも右訴は利益なしと解せられていたから、前記の如く解さねば被買収者の権利保護ができないからである。

原告は昭和二三年ごろ本件計画取消訴訟を提起し、目下控訴審に係属中であることは請求原因(五)記載のとおりであるから、右訴の提起により時効は中断されている。

(二)、被告山野、同辻江は占有の始め悪意であつた。すなわち本件土地はいずれも昭和一四年九月二〇日大阪府知事の設立認可を経て都市計画区域内における宅地の利用増進を目的として都市計画法一二条により設立された大阪市喜連土地区画整理組合地区内に属し、右地区内では右目的のため公園、広場の設定、大小道路網の新設、下水溝、橋梁設定等の公共用施設の建設、組合員に対する土地の分合、交換、整地等宅地に適合すべく諸般の事業を実施し、該組合は昭和一六年組合員に対し仮換地指定処分済であり、かくして本件土地を含め右地区内地域は従来の湿地帯から優秀なる住宅地または工場地帯として交通、保建、衛生上最も快適な地帯に変貌し来たり、原告も右変貌に則して本件土地に建物建築計画中であつたが恰も戦時中のこととて建築資材の統制強化によりやむなく時期の到来を待望していたものである。そしてまた右事業開始に先立ち、組合及び原告を含め土地所有者は小作人と数回協議の末五カ年間の賃料若くは同相当補償を支払い昭和一二年末迄に土地の返還を受けた上事業の施行がなされたものであつた。以上の次第で、本件計画取消判決においても認定されているとおり、本件土地を含め右地区内土地はすべて右計画当時非農地であり、また右返還により小作地でもなくなつていたものである。また右計画当時仮に被告山野、辻江が喜連土地管理組合なる者より本件関係土地の耕作を許諾されて耕作していたとしても同組合更には前記喜連土地区画整理組合はもともと地区内にある本件土地を耕作などに供して管理する権限のないことは前記都市計画の目的より明らかであり、また原告においても本件土地の管理を委任したりこれを授権したこともないから右被告両名の耕作は無権限によるもので本件土地が非小作地であることに変りはない。

以上のとおり本件計画及びこれに基く買収処分には非農地、非小作地を、また別に自創法五条五号該当地を、買収せんとした各瑕疵があり、また、前記被告両名に対する売渡処分自体についても耕作権限がなく売渡資格のない右両名の買受申込によりなされた瑕疵が存し、前記被告両名はこれらの瑕疵は少くとも買収が非小作地についてなされたこと、及び売渡が買受資格のない者の買受申込に基いてなされたことを熟知し、ひいては売渡処分の瑕疵を知り、よつて自己がこれにより所有権を取得しうることに疑をもつていたというべきである。

六、前項再抗弁に対する被告らの答弁

(一)の法律論はすべて否認、(二)については全被告において結論は否認し、被告山野同辻江の耕作事実は認め、その余については、当事者の表示記載の被告奥村以下六名の被告において本件土地が原告主張の組合地区内に存在することは認め、組合員所有土地の整理分合、交換、整地、その他主張事業施行と仮換地済の点は否認し、その余は不知、被告国において前同被告らの認めた点及び主張区画整理組合の設立経過を認めその余は不知、被告大阪市、同大阪府において、すべて不知。

第三、証拠関係〈省略〉

理由

第一、本案前の判断

先ず本件訴訟物は将来発生すべき本件土地所有権に基く現存登記の抹消請求権であるが、その発生は別訴である本件計画取消訴訟の判決が原告勝訴に確定することのみにかかり、しかも右判決確定事実自体は発生が将来の事に属する不確定な事実(所謂条件といわれるもの)に当るが、右事実の発生自体は誰でも容易に認識しうる性質のものであるから、右将来の請求権はその発生の基礎関係が明らかなものということができ民訴法二二六条により予め請求が許される請求権に該当するというべきである。

ついで同条の予め請求をなす必要性の存否についてみる。成立に争いない甲一号証並びに弁論の全趣旨によると、原告より大阪府知事を相手とする本件計画取消訴訟が昭和二三年当裁判所に提起され(大阪地方裁判所昭和二三年(行)六五号の四事件)、同裁判所においては本件計画が取消され原告が勝訴したが知事より控訴提起があり右訴訟は現在大阪高等裁判所に同庁昭和四一年(行コ)六七号事件として係属中であり、更に他方では右計画に基く買収及び売渡処分がなされ、右売渡処分により被告山野は第一土地の、同辻江は第二土地の各所有権を取得したと主張する者であり、右被告両名及び被告国を除くその余の被告らは全て本件土地の転得者やその相続人であり、のみならず被告国を含めて被告ら全員は被告側の取得時効を主張し原告の所有権回復の余地ない旨主張して抗争していることが認められる。右事実によれば、たとえ本件計画取消訴訟の判決が原告勝訴に確定したとしても、その上で国を含む各被告に対し本件訴訟物である各関係登記の抹消登記手続請求をなしてみても遅滞なき任意の履行を期待することができず、却つて本件全被告らにおいてこれを履行しない意思が容易に推知される。

そうだとすると本件訴えは予め請求をなす必要があるものというべきであるから爾余の双方の本案前の主張につき考えるまでもなく適法である。

第二、本案の判断

一、請求原因(一)は被告国及び同大阪府において明らかに争わないから自白したものとみなされ、その余の被告と原告の間でも争いがない。

二、本訴請求については、先づ被告らの時効の抗弁及びこれに対する原告の再抗弁につき判断する。

(一)、被告らの抗弁(一)については、原告において明らかに争わないから自白したものとみなされる。従つて本件第一土地については被告山野及びその占有承継人のために、同第二土地については被告辻江及びその占有承継人のために、夫々昭和二三年一〇月一八日より取得時効が進行し始めたというべきである。

(二)、そこで原告の時効中断の再抗弁についてみる。取得時効中断事由として民法一四九条所定の裁判上の請求を考えるに、権利者が原告となつてその権利に基く給付又は確認請求をすることであり、権利者が消極的確認訴訟において請求棄却の判決を求め、抗弁として権利の存在を主張することもこれに含まれるものと解すべく、従つて、それは裁判上の権利主張でなければならぬ。しかも右権利主張は時効を援用する者に対する訴訟においてでなければならないところ、原告主張の本件計画取消訴訟は、行政庁たる農地委を相手とし、行政処分の効力若くは違法性自体を訴訟物として争うもので本件土地所有権の主張をしているものでもなく、かつ本件で時効を援用している被告らを相手とするものでもないから、右訴訟提起を以て被告らに対する「裁判上の請求」があつたといえないこと明らかである。よつて、右取消訴訟の提起により時効は中断されているとの原告の右再抗弁はそれ自体理由がない。

(三)、つぎに原告の悪意の再抗弁及び被告らの抗弁(二)のうち無過失の点につき併せて考える。

(1) 先ず本件の被告山野、同辻江の如く政府より自創法一六条による土地の売渡を受けその占有を始めた者は特別の事情のないかぎり右売渡処分により自己が所有権を取得したものと信じるものというべく更に特別の事情のない限りそう信ずるにつき右売渡処分若くはその前提処分である買収処分に無効、取消事由たる瑕疵のないことまで確かめなくとも過失がないというべきである。けだし当の政府が売渡処分の前提である買収処分及び売渡処分自体に各々要件ありと認定して売渡しているのであるから法律知識のない一般人としては特別の事情のない限り右処分により自己が所有者となつたと信ずるのは当然であつて、右両処分に前示瑕疵がないことまで確かめなければ所有者となつたと信ずるにつき過失があるというのは余程特別の事情のない限り一般人には難きを強いるものといわねばならないからである。

(2) これを本件について前示善意又は無過失の推定を妨ぐべき各特別の事情の存否について考える。まず成立に争いない甲一号証(当裁判所昭和二三年(行)六五号の四事件判決)によれば本件計画取消判決は本件買収計画には当時本件土地は前記両被告により耕作されていたが自創法にいう農地でないと評価すべきを農地と誤認した瑕疵がある旨判示している。しかしながら仮に右判決判示のような、更にまた原告主張のような本件計画に非農地、非小作地、自創法五条五号該当性誤認の各瑕疵があつたとしても、もともと瑕疵とは法律上の積極または消極的処分要件とされる事項の欠缺をいうのであるからその認識自体に法律知識を要し、個々右瑕疵該当の事実を知つていることから直ちに瑕疵をも知つているものとはいいがたいものであるところ、右三個の瑕疵については、右判決も示す如く本件の場合の非農地の瑕疵及び五条五号の瑕疵は性質上いずれ高範囲の事実認識と高度の法律知識と判断能力と周到な資料によらねば容易に判断了知しえない事柄であり、また非小作地の瑕疵についても、その主張は昔日の事に属する昭和一二年頃の数年間無年貢の特典付土地返還約束により元耕作人であつた前記被告両名が耕作権限を失つたままになつていることを原因とするものである上、被告山野卯一郎の本人尋問結果により成立を認める乙一号証及び同被告並びに同辻江末吉の各本人尋問結果によれば、被告山野は昭和一四年頃より、実兄より耕作権の承継を受けたとの判断のもとに、被告辻江は父より小作権の承継を受けたとの判断のもとに、夫々関係土地の耕作を始め、少くとも原告主張の仮換地指定済の頃である昭和一六年頃以降本件買収時まで間断なく小作人のつもりで右各土地を耕作し来たつたこと、他方右被告両名は年貢のつもりで、太平洋戦争中より原告宅へ米を、昭和二一同二二年は自ら地主の組合と思料していた喜連土地管理組合へ金銭を、夫々納めたりなどしていたことが認められることと対比すれば買収当時の時点でなお無権限耕作のため非小作地と判断するには相当程度の法律知識を要するというべきである。そして更に右両供述によれば前記被告両名共に特に一般人以上の法律知識があつたとは認められない。

そうだとすると仮に原告主張のような各瑕疵が本件計画ひいては本件買収処分に存するとしても右被告両名において原告主張の如く右各瑕疵を知つていたものとは到底いいえず、右瑕疵の態様自体も直ちに前示善悪及び無過失の推定を防ぐべき特別事情に当るといいがたく、他に証拠上右特別の事情を認めることができない。

(3) そうだとすると被告山野、同辻江は関係土地の占有の始め喜意無過失であつたというべきであつて、原告の再抗弁(二)は理由なく被告らの抗弁(二)のうち無過失の点は理由がある。

なお原告は転得者の無過失を争うが、一〇年間占有による時効取得の要件として問題となる善意無過失は右一〇年間の始期に当る占有者についてのみ問題となるに過ぎないから主張自体理由がない。

そうだとすると被告山野、同辻江の本件土地占有開始後一〇年を経過した昭和三三年一〇月一八日を以つて第一土地については被告助田の、第二土地については被告辻江の各取得時効が完成したというべきである。よつて被告らの抗弁(二)はすべて理由がある。

(四)、そして被告らの抗弁(三)のうち右時効完成後の転々譲渡の事実については原告の明らかに争わないところであるから自白したものとみなすべく、従つて同項記載の取得時効の援用はいずれも有効な援用権者によるものというべくこの結果第一の(一)土地は被告大阪市が、同(二)土地は被告奥村両名が、第二土地は被告大阪府がいずれも時効によりその所有権を原始取得し、反面仮に本件計画取消判決が確定しても原告に本件土地所有権の回復の余地はなくなつたというべきである。

第三、結論

以上の次第で原告が本訴で予め請求をなす本件土地所有権に基く登記抹消請求権は存在しないことが明らかであるから右請求権に基く原告の被告ら全員に対する本訴請求はすべて理由がないというべきである。

よつてこれを棄却することとし民訴法八九条により主文のとおり判決する。

(裁判官 増田幸次郎 杉本昭一 宗哲朗)

(別紙物件目録、別表省略)

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